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ジャーナル

株式会社MJS Finance & Technology | エムエフティー(MFT)

日本のデジタル化促進の鍵?
マイナンバーカードの普及でみえてくるもの



新型コロナウイルスの影響により、脱ハンコ・脱FAXなど日本のデジタル化が急速に進んだと言われていますが、諸外国に比べると遅れているのが現状です。

なかでも、2021年9月からスタートするデジタル庁の理念「人に優しいデジタル化」の肝になる「マイナンバーカード」の普及が進んでいません。

なぜマイナンバーカードの普及が進まないのか調査を進めると、感覚的な壁や日本人の国民性が影響している可能性が高いことが明らかになりました。

今回は、日本のデジタル化が遅れている現状を踏まえたうえで、マイナンバーカードの現状や、実際に普及したときにどのようなことが見えてくるのかについて、解説していきます。

日本のデジタル化は海外に比べて遅れている

日本政府のデジタル化の遅れは、国連が2020年7月に発表したデジタル政府の開発状況に関する調査で具体的に判明しています。

(引用:ガートナー ジャパン)


日本は2018年に10位だったのですが、2020年には14位にランクダウンしました。日本は20年以上も前からデジタル化構想を打ち出していたものの、2021年9月にようやくデジタル庁がスタートするほど遅れているのが現状です。

また政府だけでなく民間企業のデジタル化が進んでいない点も、アメリカの民間企業との比較で指摘されています。

(引用:JEITA)


コロナ禍におけるデジタル化の影響について、アメリカでは「DXとして取り組む領域が増え、予算や体制が拡大」がトップとなっています。

一方で、日本でも同じ項目がトップとなったものの、「DXに関する予算、体制など、『コロナ前』と大きく変わらない」や「一時的にDXへの取り組みがストップ」が並びました。

この調査から、新型コロナウイルスをきっかけにして、日本とアメリカとでデジタル化の進み具合に差が開く可能性が指摘されています。

脱ハンコ・脱FAXの流れとマイナンバーカード

ただし、脱ハンコ・脱FAXと、デジタル化も少しずつではありますが進んでいます。

官公庁では、不動産関係・金融手続き関係など脱ハンコ・脱FAXが遅れている分野を除き、法令に根拠がない押印を求めない、押印がなくとも申請を受け付ける、オンライン手続を簡素化する、電子メールによって書類を受理するといった取り組みを進めています。

また民間企業でもFAX文化の根強いメディア業界、不動産業界の脱FAXがあまり進んでいない分野を除いて、ペーパーレス化を進めてeFAXや電子署名といったツールを活用し、従来のFAXに代わる新しい手段を取り入れているところも増えています。

脱ハンコ・脱FAXの問題のように、デジタル化の遅れで議論に上がることが多いのが、マイナンバーカードの普及率の低さです。

マイナンバーカードとは?どんなメリット・狙いで導入された?

マイナンバーは国民一人ひとりに配布された12桁の番号であり、「オンラインでの本人証明」が可能になるものです。

そしてマイナンバーを活用するために必要なのがマイナンバーカード。カードの裏側についている金色のICチップに、本人証明に必要な電子データが入っています。「このカード1枚を持っているだけで様々なことが可能な社会になる」ことを狙って導入されました。

今後の国会で法案が成立すれば、引っ越しの際に行う転出・転入手続きも大幅に簡略化され、健康保険証としての利用や、オンラインで医療費や薬の情報、特定健診の情報なども確認できるようになります。

2025年3月からは運転免許証の代わりとしても使えるようになり、医師や看護師などの国家資格証、母子健康手帳など、各種カードとして利用の幅が広がっていく予定です。

現在の日本の状況は?

今後、持っているだけで様々な恩恵を受けられるマイナンバーカードですが、カードの交付枚数は全国で約3500万枚、率にして28.3%にとどまっているのが現状です。

(引用:nippon.com)


さらに利用できるサービスにしても、2021年8月時点では住民票の写しや印鑑登録証明などをコンビニで取得する、確定申告を行う、児童手当や保育所の入所申請のように子育てに関する手続きができると、限られたものしか受けられません。

海外の個人識別番号の普及率は?

海外で個人識別番号が普及している国は多く、スウェーデン・デンマーク・エストニア・フィンランド・アメリカ・フランス・韓国や、中南米やアフリカといった新興国など多くの国で活用されています。

特にスウェーデンやデンマーク、エストニアなど、早くから個人識別番号を導入した国は、官民のサービスを一体化させて、利便性の高いサービスを受けられています。

なぜ、日本では普及してなかったのか?(普及が進まないのはなぜか?)

マイナンバーカードの普及が遅れている理由には、感覚的な壁や、日本人の国民性、個人情報を把握されたくない人がいることが挙げられるでしょう。これはキャッシュレス決済が普及しないことに似ているかもしれません。

「無くても困らないなら、面倒くさいので使いたくない」と思ってしまうのは、ごく自然なことだと思います。

確かに、2021年8月時点でマイナンバーカードを使う具体的なメリットは少なく、役に立つかどうかわからない人が多いのも無理はありません。

さらに、1990年代に「国民総背番号制」が問題になったことも背景にあるようです。当時の議論では「国民を番号で管理するなんて何事!」といった意見があり、プライバシーの侵害になると考えられていました。

そして「個人情報が漏れるのが怖い」というセキュリティの問題も大きいです。銀行口座との紐づけも「収入や財産を把握して課税されるのでは?」という国側の思惑が透けて見えるので、抵抗を感じる人も多いでしょう。

給付金申請時、混乱の理由

2020年の10万円特別定額給付金の申請の際に、オンライン申請の方が郵送手続きよりも早いと発表されて、多くの国民が殺到したことは記憶に新しいかと思います。

この時に混乱した人が続出した理由には、オンラインの良さを活かせないシステムの不備がありました。

給付金を申請した人の情報が正しいかどうか、パソコンの画面と書類を手作業で職員がチェックしなければならず、スピーディに手続きを進められずに時間がかかってしまいました。

この時にはマイナンバーのシステム「マイナポータル」が使われていたのですが、国民の個人情報を保管している住民基本台帳システムとの連携がされていなかったのです。臨時に職員が増員されたのですが、処理が追いつかず、対応する職員も疲弊してしまいました。

またマイナポータルにログインするためのパスワードを忘れた人が多く、役所に電話が殺到、つながらないという事態に。パスワードを5回間違えるとシステムにロックがかかって使えなくなり、役所で手続きをしないと解除されない仕様になっていました。

またオンライン申請にはマイナンバーカードを読み込むカードリーダーが必要、これがどこで入手できるか具体的にされていなかったのも問題でしたね。

特別定額給付金の時のような混乱を避けるためにも、マイナンバーを導入して国が情報を管理し、必要があればいつでも照会できる状態にしておかないと、不便さが解消されないでしょう。

対応する職員も面倒な手作業を強いられるので、サービスを提供する側・受ける側の双方にメリットがありません。

法人にもあるの?識別番号(gBizID)

国民1人一人に割り当てられているマイナンバーのように、法人にも「gBizID」というサービスがあります。

1つのID・パスワードで、様々な行政サービスにログインできるサービスで、補助金の申請、社会保険手続き、農林水産省・厚生労働省など各省庁への営業許可・申請手続きなどがオンラインで可能になります。

順次サービスが拡大していく予定とされているので、マイナンバーのように、それ1つあればすべての手続きができるようになるかもしれません。

マイナンバーカード普及でみえてくるものとは

新設されるデジタル庁が目指す「人に優しいデジタル化」が実現できれば、デジタル化されていると感じることもなく、すべての国民がデジタル化の恩恵を受けられます。

最終的には、マイナンバーカードさえあれば、診察券・免許証・パスポートなどすべてが1つになり、セキュリティの不備におびえることもなく、快適な暮らしができるようになります。

現状では不便な点もありますが、これから便利に進化していく仕組みを、「よくわからないから」「個人情報が漏れるから」と拒絶するのはもったいないです。

まずはマイナンバーカードを取得して、デジタル化への第一歩を踏み出してはいかがでしょうか?